子どもを幸せにするための子育てのポイント①
「子育ては何のためにしているのか?」と訊かれれば、「子どもを幸せにするため」と答える人が多いでしょう。しかし子育ての結果、実際に子どもが幸せになっているかどうかは、子育ての主体である親が、その「幸せ」を抽象的な概念にとどめるのではなく、できるだけ具体化できるかどうかにかかっています。
一口に「幸せ」と言っても、人それぞれの価値観があって違いがあることは否めません。ところが慶応大学の前野隆司教授の研究によると、価値観はともかくとして人間の幸せには4つの因子があるようです。
その4つとは
①「やってみよう」(成長意欲)
②「ありのまま」(自己肯定感)
③「ありがとう」(感謝・共生意識)
④「なんとかなる」(ポジティブ思考)
です。これは大人も子どもも同じで、「子どもを幸せにする」というのは、この4つの因子をいかに高めていくかに他ならないのです。今回のコラムでは、子どもが何でも「やってみよう」と成長意欲を持つためのポイントをお話しします。
皆さんは小学校や中学校の頃に、スポーツテストで垂直跳びをやったのを覚えているでしょうか?静止状態で腕を伸ばしたところにチョークで印をつけておいて、そこから跳び上がってチョークの印をつけたところの高さの差が垂直跳びのスコアになるという種目です。この種目は2回跳んで、より大きいスコアを本人の記録にすることが一般的です。一度目の挑戦で50cmを記録した生徒にそのまま二度目を跳ばせると、記録が伸びる子もいれば、記録が落ちる子もいます。ところが一度目の挑戦の後、一度目の記録の少し上段にチョークで線を引いて「ここを目指して跳んでごらん」と言うと、すべての生徒が二度目の挑戦において一度目の記録を上回るのです。つまり闇雲に挑戦するのではなく、少し高めの目標を持って挑戦すると意欲が高まるということなのです。
2歳を過ぎると、子どもは自尊心が芽生えて、いろんなことに挑戦しようとします。何度挑戦してもできないことはあきらめてしまいがちですが、中には少し頑張ればできるようになることもあります。親が子どもの挑戦を眺めていて、少し頑張ればできそうなことを見つけた時に「○○(お子さんの名前)なら、必ずできるよ」と声をかけるのが、成長意欲を高めるポイントです。何度挑戦してもできないことであっても、本人が「やりたい」と言えば、同じように「○○なら、必ずできるよ」と言ってあげてください。
そして、挑戦が成功した時には、ほめることで喜びを共有しましょう。ほめ方にも2つポイントがあります。
一つ目は子どもは結果よりも過程を評価されることを喜びます。何かができた時に「すごいね」「よくできたね」とほめられるよりも、「よく頑張ったね」とやろうと頑張っている姿勢についてほめられるほうが嬉しいということです。親は子どもからなるべく目を離さずに、努力をしている途中過程を評価するように心がけましょう。家事をするのに必死だと、何かに取り組んでいる子どもを見ることもできず、ほめることもできません。常に心に余裕を持って、子どもの様子に目を配る余裕を持ちたいものです。
さらに子どもは親を喜ばせることが本性なので、ほめ手が喜んでいる表現を付け加えると成長意欲がより高まります。「頑張っていたから、お母さん(お父さん)は嬉しいな」というほめ方です。自分の行動が他人によい影響を与えていると自覚をすることで、子どもはより頑張ろうと成長意欲を獲得していくのです。
親学推進協会講師 杉本哲也
***杉本哲也氏***
昭和54年生まれ、大阪府八尾市出身
京都大学大学院工学研究科修了
味の素株式会社、松下政経塾、衆議院議員政策担当秘書、総合幼児教育研究会客員研究員を経て現在
幼稚園・保育園の経営者向けの塾・自彊不息塾塾長
幼年国語教育会 理事
一般社団法人 実践人の家 理事
国内の保育園・幼稚園だけでなく、フィンランド、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、バングラデッシュ、ミャンマーなど海外の幼稚園・保育園・小学校でも幅広く講演をしている