子どもを幸せにするための子育てのポイント②
子どもを幸せにするポイントの最後は「なんとかなる」と思えるポジティブ思考を持たせることです。かのトンチで有名な一休禅師が亡くなる時のお話を紹介します。
一休禅師はいよいよ臨終を向けそうになった時に、枕元に弟子たちを呼び集め、「この先、私が亡くなった後本当に困り果てた時にだけ、これを開けなさい。それまでは絶対に開けてはならないぞ」と巻物を弟子たちに遺しました。
何年か後に、寺に大問題が持ち上がり、寺の存亡が危うくなりました。弟子たちは、知恵の限りを尽くすも解決策がでてこず、どうしようもなくなってしまいました。その時、一休禅師が遺してくれた巻物のことを思い出し、紐解いてみると、その巻物に書かれていたのは『大丈夫。心配するな。何とかなる』という言葉だけでした。弟子たちはそれを見て、唖然としましたが、その言葉通り、寺の問題は何とか無事に解決したそうです。
この話のようにピンチに陥った時に「なんとかなる」と思えれば、どんな困難も乗り切ることができます。
親学では「主体変容」という考えを大切にしています。これは子育てされる側の子どもを変えようとするのではなく、子育てする側の主体である親が変わることを重視することです。親学では「親が変われば子どもが変わる」という理念を掲げています。とくにこのポジティブ思考の話は、「親がポジティブ思考になれば、子どももポジティブ思考になる」ということです。
では親がポジティブ思考になるためには、どうすればいいか。一つ目は「自分は運がいい」と思うことです。パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、入社面接を受けにきた人に対して必ず「あなたは運がいいですか?」と質問をし、「私は運がいいです」と答えた人だけを採用しました。なぜなら人生にはいいことも悪いこともたくさんありますが、「自分は運がいいです」と答えた人は今までの自分の人生をいい側面から見る人であり、ポジティブ思考の持ち主だからです。
二つ目は夜寝る前にその日一日にあった、よかったことを振り返る習慣を付けることです。毎日よかったことを振り返っていると、日中からいいことを探そうとする意識に変わります。これが日常的にできるようになってきたら、今度は振り返る時に思い通りに行かなかったことを思い出して、プラスの側面から見ることができないか考えてみるとよいです。
三つ目は「ない」「ダメ」といった否定語を使わず、ポジティブな言葉を多用することです。我が国では「言霊」と言うように、使う言葉が心に影響を及ぼします。子どもが望ましくないことをしたとしても、直接「ダメ」と言うのではなく、好ましい状態をそのまま表現してください。たとえば公共の場で「騒いではダメ」と言うのではなく、「静かにしようね」という言い方であったり、触ってはいけないものがある時に「触っちゃダメ」と言うのではなく、「そのまま置いておいてね」という言い方です。
ポジティブ思考は物事のいいところ、つまり長所を発見することにつながります。親がポジティブ思考になれば、必然的に子どものいいところを見つけることにつながり、自然とほめ言葉がたくさん出てくるようになります。ほめ言葉をたくさん浴びせられた子どもはそれが自信となって、ピンチになっても「なんとかなる」というポジティブ思考を持つことができるのです。ぜひお子さんのいいところをたくさん見つけて、それを口に出して伝えてあげてください。
親学推進協会講師 杉本哲也
***杉本哲也氏***
昭和54年生まれ、大阪府八尾市出身
京都大学大学院工学研究科修了
味の素株式会社、松下政経塾、衆議院議員政策担当秘書、総合幼児教育研究会客員研究員を経て現在
幼稚園・保育園の経営者向けの塾・自彊不息塾塾長
幼年国語教育会 理事
一般社団法人 実践人の家 理事
国内の保育園・幼稚園だけでなく、フィンランド、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、バングラデッシュ、ミャンマーなど海外の幼稚園・保育園・小学校でも幅広く講演をしている