子育てコラム・熱中症対策

「熱中症にならないために家庭でできること」

全国的な自粛要請で少し窮屈だったかもしれない今年のゴールデンウィークでしたが、気温が一気に上がって、夏が見えてきました。暦の上では5月5日(こどもの日)が「立夏」ということで、もう夏が始まったということになります。世間のコロナ騒動にかかわらず季節は変化していきますので、これから梅雨を経て本格的な夏になります。

夏を過ごす上で、気をつけなければならないことは「熱中症」対策です。私が小さい頃は「日射病」という言葉がよく使われていて、夏に外へ出る時は親や先生から「必ず帽子をかぶりなさい」と口を酸っぱくして言われたものです。最近の日本の夏は、最高気温が35℃を越える猛暑日が連続して続くため、帽子をかぶるだけでは熱中症対策にはならなくなってきました。

実は熱中症になりやすい原因は何かと言えば、「汗をかかない」ことにあります。人間の身体には全身に汗を出すための汗腺(かんせん)があります。暑い季節になると、この汗腺が働いて汗を出し、体表の温度を下げてくれます。ところが暑い中でも、この汗腺が機能しないと、いとも簡単に熱中症になってしまいます。

一昨年のことです。6月に出張でオーストラリアに行きました。オーストラリアは南半球にあるので、6月は日本と季節が反対で冬です。シドニーやキャンベラでは最高気温が5℃以下でした。そのような中で二週間ほど過ごし、日本に帰国するとすぐに、熱中症のような症状になってしまいました。寒い場所では、全身の汗腺が閉じてしまい、体温を外に逃がさないようになるからなのです。汗腺が正常に働くためには、時間をかけて汗かきの習慣を身に付けなければいけません。

日本でも冬が終わって春になり、新年度が始まって、ゴールデンウィークと徐々に暖かくなります。この間に閉じていた汗腺が少しずつ開き始めます。梅雨を過ぎると、一気に気温が上がり、真夏日や猛暑日が出てきますが、その時期に熱中症を防げるよう汗腺を鍛えておくためには、5月と6月でやや多めに水分補給をして、しっかりと汗をかくことが鍵になります。とくに朝から多めに水分をとって身体を動かし汗かきの習慣を続けておけば、7月8月の猛暑にも耐えられる身体になります。そこで、ご家庭で熱中症対策としてできる一つ目は、5月以降夏場にかけて、朝食の際にやや多めに水分を取るか、登園の直前にコップ一杯の水かお茶を飲むことをお勧めいたします。

また3年前の6月には、インドに出張に行きました。6月のインドは、インド人でも「6月にはインドにいたくない」というくらいの酷暑になり、場所によっては最高気温が50℃を越えるところもあります。私がかの有名な観光地であるタージ・マハルを訪れた時は、気温が52℃ありました。外を歩いているとサウナの中で服を着て歩いているような感覚になります。もちろん現地の方々はそのような高温の中でも熱中症になることなく過ごしており、熱中症になってしまうのは観光客ばかりです。旅のガイドが「ホテルでエアコンの温度を低くしすぎる観光客ほど、外で倒れやすいですね」と言っていました。

これは日本国内でも同じことで、家でエアコンの設定温度が低い人は汗腺が閉じやすくなり、外でも汗をかかなくなってしまいます。ご家庭でできる熱中症対策の二つ目は、梅雨明け以降7月から8月にかけて、家でのエアコンの設定温度を低くしすぎることのないようにすることです。

世界的に年々気温が上昇しているのは皆様も実感されていることだと思います。お子様の命を守るために、ご家庭でも私が挙げた二つの熱中症対策を意識していただけると幸いです。

親学推進協会講師 杉本哲也

 

***杉本哲也氏***

昭和54年生まれ、大阪府八尾市出身
京都大学大学院工学研究科修了
味の素株式会社、松下政経塾、衆議院議員政策担当秘書、総合幼児教育研究会客員研究員を経て現在

幼稚園・保育園の経営者向けの塾・自彊不息塾塾長
幼年国語教育会 理事
一般社団法人 実践人の家 理事

国内の保育園・幼稚園だけでなく、フィンランド、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、バングラデッシュ、ミャンマーなど海外の幼稚園・保育園・小学校でも幅広く講演をしている。