子育てコラム・一人前の大人にするためのポイント②

一人前の大人にするための子育てのポイント②

「子育てでいちばん大切なことは何ですか?」という質問に対する私なりの答えの二つ目です。まず初めに、ひとつ逸話を紹介いたします。

ある田舎の村に賢者が講演に来ることになりました。講演テーマは「幸せな人生を送るために大事なこと」だったので、村人たちは「さぞかし、いい話が聴けるだろう」と思って、挙って講演会に参加しました。賢者が講演で訴えたことは「皆さん、幸せになるためには石を拾ってください」ということでした。多くの村人たちはガッカリして「石を拾うくらいで幸せになるくらいなら誰でも拾ってるよ」、「いい話を期待していたのに、石を拾う暇なんてあるわけない」などと口々に言いながら会場を後にしました。ところが中には「賢者が言うくらいだから、石を拾うと何かいいことあるかも」と言って、実際に石拾いをする村人も少しいました。その後3年経ちました。石を拾った村人たちは大喜び、拾わなかった村人たちは後悔しました。なぜなら拾った石がすべてダイヤモンドに変わったからです。

石を拾ったらそれがダイヤモンドに変わるというのは、地味だけれどコツコツと続けることで将来役に立つ行動の例え話で、その代表的なものが読書です。

子育てで大切なことの二つ目は、読書習慣を身に付けることです。読書習慣を身に付けるには、子どもの発達に合わせた親のかかわりがとても大事になってきます。

子どもが言葉を口にするのは、生後1歳を過ぎてからですが、言葉そのものを獲得しようとする行為は生後すぐに始まります。口から発することはできないけれど、理解している言葉のことを内言語といいます。生まれてすぐに社会に対応しようと内言語の獲得が始まりますので、生後3カ月から読み聞かせは効果を発揮します。この時に読む絵本は、同じ言葉の繰り返しが多い「リズムのいい」絵本がお勧めです。

1歳を過ぎると、覚えた言葉を口にするようになってきて、多くの単語や短い文章を獲得しようとします。1歳半から3歳くらいまでの間は、短い文章で構成された絵本がお勧めです。

2歳の終わりから3歳くらいになると、ストーリーが理解できるようになります。ストーリー性のある昔話やおとぎ話の絵本がお勧めです。

とくに2歳から4歳までは、獲得言語の数がたったの2年間で200から1000と5倍になることから、言語爆発期と呼ばれているとても重要な言語成長期です。子どもが気に行った絵本を何度も何度も繰り返し読むことで、たくさんの言語を獲得して感情豊かな子どもになっていきます。

5歳を過ぎると、簡単な文章の絵本なら自分で読むことができるようになります。読み聞かせだけでなく、今度は子どもが読むのを親が聴くということを始めてもらうことがお勧めです。子どもが小学校低学年の間くらいまで子どもが文章を読むのを親が聴くということを繰り返してもらうと、大人になってからの読書習慣が定着するでしょう。

読書の効用は主に三つあります。一つは語彙力が多くなって、自分の頭で考えることのできる人になります。二つ目は想像力が磨かれることでコミュニケーション能力の高い人になります。三つ目は、感性が磨かれて、道徳性の高い人になります。

イギリスのブレア元首相がかつて「7歳の子どもの読書量が20年後のイギリスの存在価値を決める」と言ったそうですが、大人になってからの読書習慣はまさに7歳までの親のかかわりが鍵となります。ぜひ就学前に、各家庭で読書習慣の基盤を身に付けてもらえることを願っております。

親学推進協会講師 杉本哲也

***杉本哲也氏***

昭和54年生まれ、大阪府八尾市出身
京都大学大学院工学研究科修了
味の素株式会社、松下政経塾、衆議院議員政策担当秘書、総合幼児教育研究会客員研究員を経て現在

幼稚園・保育園の経営者向けの塾・自彊不息塾塾長
幼年国語教育会 理事
一般社団法人 実践人の家 理事

国内の保育園・幼稚園だけでなく、フィンランド、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、バングラデッシュ、ミャンマーなど海外の幼稚園・保育園・小学校でも幅広く講演をしている。